ニナファーム社が提供する商品の多くには、Advanced Delivery System という技術が応用されているようです。ニナファームジャポン会長である Dr.Bejit EDEAS / ベジット・イディアス氏が、Advanced Delivery System に関して、専門誌に論文を掲載したことがありますので、下記にご紹介します。
2004年度の Fragrance Journal から抜粋
2004/08/15発売号 (No.287)
特集 新しい抗酸化・抗老化原料の開発動向
抗酸化・抗老化化粧品に対する新しい新デリバリーシステム
New delivery systems for antioxidants and anti-aging cosmetic products.
Bejit EDEAS
New delivery systems for antioxidants and anti-aging cosmetic products.Accession number;04A0637435
Title;New delivery systems for antioxidants and anti-aging cosmetic products.
Author;EDEAS B(Ninafamujapon)
Journal Title;Fragr J
Journal Code:G0987B
ISSN:0288-9803
VOL.32;NO.8;PAGE.65-69(2004)
Figure&Table&Reference;FIG.7, TBL.1, REF.11
Pub. Country: Japan
Language: Japanese
Abstract: Antioxidants play an increasingly important role in the development of effective anti-ageing formulations. Cosmetic companies expect more stable, effective and safe ingredients. Consumers expect fast and visible results. To slow skin aging and partially reverse it, The delivery systems of the ingredients become the main sector of progress in the formulation of new cosmetics. The research has been mainly conducted in high added value actives (like SOD, resveretrol) which are very powerful but instable actives. Studies showes these new delivery systems offer particulary a more effective solution for the skin aging resulting from the photoaging. New vehicles like liposomes and nanoparticles open the door for new generations of antioxidants with enhanced bioavailability and very stable activity, combined with a controlled and sustained release of actives into the epidermis, that can repare and protect the cell. (author abst.)
Key words : skin, cell membranes, free radicals, antioxidants, SOD, nanoparticles, liposomes, bioavailability.
Bejit EDEAS : 1993年ナンシー大学にてバイオテクノロジーにおける学位取得。1995年パリ第11大学にて生化学博士号を取得。J.S.A.(Japanese Society of Antioxdant)(日本抗酸化学会)を設立、会長に就任。2003年に株式会社ニナファームジャポン取締役会長に就任。抗酸化物質研究と応用を推奨し、また、抗酸化ダイエットという新しい発想を発表している。フランス化粧品協会(French Society of Cosmetology)会員。
1、 皮膚組織とフリーラジカル
皮膚は、多様な細胞や臓器を構成する複雑な存在でありそれぞれが特有の機能をもつ。皮膚はUVを含む有害な外的環境から身体臓器を守り、同時に体温を維持するためのサーモスタットとして機能する。皮膚は複数の異なる層から成り立ち、それぞれが独自の機能を有する。主となる層は、表皮、真皮、皮下組織である。表皮は上皮細胞を層状に形成し、基底膜を結合組織層として真皮上に存在する。さらに、脂肪組織の内層は皮下組織さらには表皮、真皮を支える働きをする。
スキンケア商品における化粧品活性物質の基本的な機能は、皮膚のバリア機能を助け強化する、あるいは表面的な状態を保つために表皮の上だけに浸透させることである。皮膚は常に空気汚染や活性酸素、UVといった環境的ストレスにさらされている。分子的見解から”外的“攻撃物質はフリーラジカルを生成、皮膚の抗酸化物の枯渇、特定のマトリックスメタロプローゼ(MMPs)の活性化、免疫システムの抑制の原因となる。
生理学的見地から、これらの分子反応は酸化ストレス、脂質過酸化反応や細胞外マトリックスの進行的分解の引き金となる。最終的に、本来の年齢的老化とともに関連し、これらの分子の損傷が老化のサインとして現れるのであろう。したがって、今日の抗老化に対する努力は活性酸素種の全体的な消去、同様にフリーラジカルの消去(抑制)に全力を注ぐべきである。
2、 皮膚内への抗酸化物質デリバリー
開発者の疑問は、試験管内での皮膚老化への効果が証明された抗酸化物質が、生理学的効果を誘導する皮膚の特定部位に実際に運搬されるのか、ということである。リボソームによるデリバリー技術は皮膚層内に抗酸化物質を運び込むことにより、その効果を増すものである。デリバリーシステムとしてのリボソームとナノテクノロジーは脂質小胞体内による実際的効果の増強を行う。リボソームは、素早く皮膚の深層まで防御的活性物質を届けるだけではなく、活性物質の活性低下を防ぐ。活性抗酸化物質の溶解性は維持される。そのため、最も生理学的効果の働く部位で長い間とどまることが可能になる。リボソームは皮膚の内部までにSOD様物質を運ぶことが可能になる。SODが非常に効果のある抗酸化物質で、ミトコンドリアの状態を維持する働きをもつ。その細胞そのものの原動力は細胞老化において非常に重要な働きを果たす。ミトコンドリアの代謝が低下したとき皮膚細胞はその修復機能を果たすことができなくなる。
3、 皮膚老化におけるリボソーム内への抗酸化物質カプセル化の効果
二重盲検法にて、ローズマリーとオリーブ葉の複合体を顔半分に塗布し、反対側の顔半分にブラセボを塗布した。シワ、シミ、炎症、乾燥状態の臨床的評価が4,8週間の時点で行われた。その結果、統計的にローズマリーとオリーブ葉の複合体グループにおいて著明な改善効果が見られ、皮膚の光老化状態が減少した。この複合体を塗布した側の総合的な顔の皮膚状態の改善は統計的に顕著であった。バイオプシーは、複合体グループにおいてコラーゲンの生成が増加されたことを示した。この研究では、ローズマリーとオリーブ葉のリボソーム化が臨床的に8週間後のシワの状態を改善したことを統計的に示した。この臨床的改善は新しいコラーゲン再生のバイオプシーと相互関係があることを示した。コラーゲンは皮膚構造を支える結合組織の主な構成成分である。皮膚は、ハリと若さを保つために継続的なコラーゲン新生が必要とされる。免疫的研究においては喫煙と皮膚老化には強い関係があると示している。ある研究においては、タバコの煙によるエキスを使用した実験で40.1%のコラーゲン生成が減少したことを示した。しかし、抗酸化物質子混合物を塗布すると、タバコやUVAによるコラーゲン破壊は減少することが示された。
4.化粧品における抗酸化物質のバイオアベイラビリティ改善のための新デリバリーシステム
高度技術の抗老化化粧品設計には、次の二点が重要とされる。
1) 化粧品に含まれる物質は皮膚を通過しなければならない。
2) 抗酸化物質はバイオアベイラビリティを安定に維持しなければならず、また作用部位で活性物質が放出されなければならない。
デリバリーシステムは効果的スキンケア商品の開発において非常に重要な役割を果たす。アンチエイジング治療はスキンケア市場に大きな成長をもたらす。
革新的デリバリーシステムの鍵となる点:
1) 皮膚浸透の増加促進。
2) 活性物質放出の制御(タイムリリース、放出の維持あるいは継続的放出と遅延的放出)
3) バイオアベイラビリティ
4) 相性の悪い原料の分離/活性物質の安定
5) 保存期間の延長/活性物質損失の減少
6) 香りのある活性物質への応用
5、 従来のデリバリー粒子
マイクロカプセル:
様々なポリメラ-ゼを使用した活性物質のマイクロカプセル化は天然物質に由来する(天然ガム、セルロース、ポリサッカライド、合成ポリアクリル、ポリアミド、脂質、キトサン)。マイクロカプセルは、第一にサイズの点でナノ粒子と異なる。マイクロカプセルは、直径1~1,100μmである。しかし最も典型的なのは3~10μmサイズである。それに対しナノ粒子は直径がサブミクロンである。マイクロカプセルは通常皮膚を浸透しない。これらは拡散あるいはカプセル破壊により活性物質を放出する。
6、新しい革新的デリバリーシステム
6-1.ナノ粒子:
ナノはギリシャ語の“小人”から派生している。つまり接頭辞の10億分の1を意味する。これはトコフェロール、ビタミンE酢酸塩、レチナール、バルミチン酸レチノール(ビタミンA誘導体)、紫外線吸収剤、アスコルビン酸バルミチン酸エステル、マグネシウムアスコルビン酸リン酸塩、乳酸、グリコール酸、カフェイン、エッセンシャルオイルなどを運搬することができる。植物由来やホワイトニングは、数多くの活性物質をカプセル化されるため、リボソームやナノ粒子技術に対する応用がなされている。
6-2、ナノ粒子/リボソーム:
ナノ粒子/リボソームは水中に分散されるリン脂質を基礎とし、皮膚内に化粧品原料を運搬するようにデザインされた粒子である。親水性コアをもつリボソームは親水性原料を運搬し、親油性部分をもつナノ粒子は親油性化合物を運搬する。これらの粒子が非常に小さい場合は皮膚内に浸透可能である。ナノ粒子はナノメートルサイズの小さい脂質小胞体である。リボソームとナノ粒子は、ほぼ同等のサイズである。どちらも直径20~1,000nmサイズである。ただしリボソームは一重あるいはさらに多重層構造の形をとり、ナノ粒子は一重層の形をとる。
7、 調整
マイクロ流動化を用いた超高圧ホモジナイズは、リボソームやナノ粒子といった脂質小胞体を調整するといった精巧な技術である。ホモジナイザーは特に相互作用を起こすためにデザインされている。このホモジナイザー内では使用前に混合された化合物流動物はまず初めに分離され、再度、ある特定の角度で結合される。この時点で高速破砕とキャビテーション力が1,200バールにまで達し脂質小胞体が形成される。超高圧ホモジナイゼーション技術は小胞体内に、分散油分を100%カプセル化する。通常、相互作用を起こす室内での多様な周波数は均質な製品を得るために必要である。平均液体粒子と粒子径分布は特徴的ナノ粒子調整の主となるパラメーターである。これらは動的光散乱により、また凍結切断により調整されたサンプルの電子顕微鏡法により決定される。小胞体の中心には多種多様のオイル状化化粧品(トリグリセライド、ホホバオイル、ボラジオイル、小麦胚芽油)、また親油性成分(ビタミンA;パルミチン酸レチノール、ビタミンE酢酸エステス、レチノール、UVフィルター、SOD様物質、香料)などを含むことができる。これらの原料の酸化に対する化学的安定性はナノ粒子内にカプセル化することにより増強される。ナノ粒子調整は油分の40%までを含有する。粒子サイズは様々なパラメーターにより影響される。最も重要なのは超高圧ホモジナイズによる圧力、濃度、油分の種類、また水中の触媒濃度である。非常に小さい粒子のみ、油から高い割合でリン脂質になりうる。
表1 粒子サイズによるナノ粒子調整リン脂質濃度と油分カプセル化量の関係
レシチン 粒子サイズ オイルコア
2,5% 100㎚ 18%
2,5% 200㎚ 42%
4% 50㎚ 10%
6% 40㎚ 10%
表1では、ナノ粒子調整のリン脂質濃度と、油分カプセル化量は粒子サイズに依存していることを示す。
8、安定性
ナノ粒子は水中において非常に安定した形で油分を分散させる。これらのエマルジョンは、粒子の無作為衝突による会合体を安定させるマイナスのゼータ電位により安定化されている。ナノ粒子の不安定化は動的光散乱により決定される粒子サイズの増加により測定される。高熱・高粒子濃度において、粒子は溶解を始める。そして平均粒子サイズの増加が測定される。
9.活性
リン脂質を基礎とする脂質粒子の最も重要な特性は角質層に対する親和性である。多くの調査において、このような粒子、リボソーム/ナノ粒子が表皮に対し著しく影響を与えるということが実証されている。様々な研究者が、リボソーム/ナノ粒子内にカプセル化された抗酸化物質が、通常の処方に比べ、表皮と真皮における活性物質の濃度上昇を示している。これらの結果はリボソーム/ナノ粒子が皮膚において、選ばれた抗酸化物質に対し安定した粒子であることを示すものである。トリートメントの主な目的は皮膚に対する抗酸化物質、使用時のバイオアベイラビリティを促進することである。リボソーム/ナノ粒子は角質層を浸透することは明らかである。浸透後、皮膚脂質と合体し活性物質(抗酸化物質)が遊離される。これらの抗酸化物質の有益な特徴はin vitro の実験が行われてきたことである。マウス繊維芽細胞は濃度の異なるSOD含有ナノ粒子を含有する培地内で培養された。これらの皮膚細胞の明らかな成長刺激が、栄養的、防御的見地からこれらの脂質粒子濃度増加と共に示された。
ナノ粒子と共に培養されたマウス線維芽細胞の成長が示された。細胞は様々な濃度のナノ粒子が存在する組織フラスコ内で培養された。ナノ粒子調整は濾過により殺菌された。また0.6%リン脂質、0.6%キャリアオイル、0.4%SODが含有された。粒子サイズ50㎚以下のナノ粒子調整はバイオベイラビリティを増加させSODを安定化させる。また現在、透過しないといわれている角質層内に活性物質の浸透を増強する。
20人のボランティアを募り、皮膚の浸透性を測定した。様々な処方の原料SODを前腕に塗布した。5時間後、テープストリッピングを行いSODを測定した。SODは、リボソーム(あるいはナノ粒子)と共に構成されることにより表皮深部にまで到達していることがはっきりと見られた。
10、 おわりに
現在、皮膚に抗酸化化粧品活性物質を運搬するために多くの方法が存在する。その技術のほとんどが製剤学に由来するものであり、うまく応用されてきた。大豆からのリン脂質は親水性(リボソーム)と親油性(ナノ粒子)の典型的な応用のための小粒子キャリアーを調整するために使用されてきた。超高圧ホモジナイズ技術は化粧品のための高品質粒子分散の生産を可能にする。粒子サイズ、粒子表面面積、活性物質重量がその調整の特徴と応用を決定する。
リボソームとナノ粒子は今日の進化したアンチエイジングケア商品にとって絶対不可欠の構成要素となっている。また今後も化粧品処方内に使用される重要な成分としての位置づけにある。キャリアとしてのリン脂質は角質層への活性物質の浸透力を高め、それゆえにそのアベイラビリティーまでも増加する。さらにSODといった非常に壊れやすい成分でさえも、この構造に守られ有効的な使用が可能になる。非常に小さいナノ粒子の調整は運搬システムの新応用の可能性を提供するものである。親油性原料は水和性になり、角質層に対し高親和性をもつようになる。
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